とうとう変形労働時間制が現実に。
公立学校の教員の働き方をめぐって、1年単位で労働時間を調整する「変形労働時間制」の導入を可能にする法律の改正案が、閣議決定されました。
教職員給与特別措置法改正案は、公立学校の教員に「変形労働時間制」を適用できるようにするもので、18日、閣議決定されました。「変形労働時間制」とは忙しい時期の勤務時間を増やすかわりに、夏休み期間中などの勤務時間を減らし、1年単位で働く時間を調整するものです。
教員に「変形労働時間制」導入へ、働き方改革で閣議決定 TBS NEWS より引用
こちらに関しては、およそ一年前に懸念する旨のエントリーを書かせていただいたところです。
blog.edunote.jp
残業時間に対するガイドラインが守られるはずがない
教育新聞の変形労働時間制でガイドライン整備 給特法改正案を閣議決定 | 教育新聞には、残業時間の上限を定めるガイドラインを策定することについても触れています。
教員の業務量を定める「上限ガイドライン」を文科大臣の指針とする条文を新設することで、教員の長時間労働の是正に法的な根拠を持たせる狙いもある。
まず、このガイドラインが守られるはずがないんです。何故か。
一部の学校にしか、タイムカードが整備されていないから。
もう一度いいますよ。
タイムカードが整備されていないんです。
勤務時間を把握する仕組みが無いのに、どうやって残業時間の上限を守らせるのか。
「ゲームは1時間までよ!!!」って親が言うけれども、仕事で遅いから把握はしてない、みたいな感じですよ。そんなん、ゲームしまくりですよ。
だから、まずは労働時間の把握が先決なんですよ。何するにしたって、現状の的確な把握があって、改善策の検討の順番じゃないですか。
それが、今回は現状の把握を行う手段が整備されていないのに、改善策をぶっ込み、なおかつ、その改善策がきちんと有効に機能したか検証する手段もないんです。
そんなのあります?
「なんか君たち、最近やる気がないみたいだから、宿題増やすねー。あ、別に出さなくていいから。」
と同じですよ。そんなのありですか?
Twitterで上がりまくる懸念の声
スト権ないので、Twitterくらいしか言う場所がない。
給特法改正案
— 教員のブラック労働改善委員会 (@katsuobushichan) October 21, 2019
ざっくり言うと、
地方公務員法を読み替えて、一年当たりの変形労働時間制OKにしたよ。
労働基本法読み替えたから、労使交渉できないよ。公務員だから、条例できまったら、そうしてね!
労働者の権利も公務員の権利も剥奪されたということ。#ss954
変形労働時間制は、閑散期に早く帰れるもしくは休みが取れるという前提があってこそ成り立つ。夏休みですら部活動で時間がつぶれる教員にはあり得ない制度なんだよ。 https://t.co/TJeCpThmxe
— 美和 (@miwa_purple) October 21, 2019
夫婦で教師の場合
— にゃーせんせ。 (@ura_cana) October 19, 2019
嫁⇒周りの目を気にして頭下げながら17時に出てお迎え
夫⇒19時定時+保護者対応、生徒指導なんかで残業
夫婦で逆の場合があったとしても
ワンオペ育児待ったなし!
先生は子育てするなってことですかね。もうホンマに辛い…#変形労働時間制
#変形労働時間制
— さよえ (@Girrafe24) October 18, 2019
子育て世代は、定時で帰ることですら負い目を感じているのです。
申し訳ないと思っているのです。
それなのに、堂々と18時19時まで会議が入ったりしたらもう精神が持ちません。
いじめられるかもしれない。
辞めるしかないのです。
こんなにも「子育て」の経験が生きる仕事なのに。
今回の閣議決定は、個人単位で変形労働時間制を選ぶかどうかを決められるという謎制度っぽいのですが、当然こうなります。
って書くと、育児の人は免除って書いてあるっていう人が出るのであらかじめ。育児で17時で帰る人に19時まで働く同僚がどんな視線と言葉を浴びせるのか考えてほしい。耐えきれず子どもを放置して働く人に悲劇が起こる。
— TNT(秋は言いたいことが多杉) (@TNTO8698) October 18, 2019
変形労働時間制が導入されたら、シングルマザーの私は、学童の迎えに行くため、毎日一時間年休をとらなくてはいけなくなるの?こどもが高学年になったら、私が家に帰れる8時位まで、娘はずっと1人で家にいなきゃいけないってこと?無理なんだけど…。
— ママせんせぇ@姥捨て山脱出! (@smamateacher) October 20, 2019
大臣「エビデンス?ないですね。」
大臣の発言集が文科省のサイトにあるのですが、いくつか引用してきましょう。悪意のある引用かもしれませんので、興味のある方は全文お読みください。
担任の先生は、自分のクラスの子供たちに何かあればですね、休日でも飛び出して行って対応していただくことも、ある意味では仕事の一つだと思っています。
…え。
休日の対応は超勤4項目該当してませんよね。大臣自ら法律無視の発言!休みの日に子どもに何かあったら、片道1時間かけて対応するのも仕事なのですか。
次。記者の質問が私の思っていることと一緒です!ありがとう質問者!
記者)
それでですね、例えばそれだったらば上限ガイドラインをきっちり守っている、守ったことがデータなりで示された上で、その制度を導入するという手順もあり得ると思うんですけれども、例えば、なにか変形労働時間制を導入することによる影響だとか、そういったものを文科省さんも例えばエビデンスだったり根拠となるデータみたいなものを持っていらっしゃるのかどうか。大臣)
今までの。記者)
今までの。大臣)
それはないですね。
はい?
ちょっと待って。エビデンスないのに導入するの?マジで?
え、何ら根拠となるものを持たない法案が、閣議決定されるんですか?すごいなー。
#変形労働時間制
— ☺︎アイムフリー☺︎ (@TeacherhaGreat) October 19, 2019
これだけ賛成している人がいないで荒れてるのに可決に向かってるのはなぜだ。それは政府が私たちのことなんてゴミクズ同然にしか思ってないからだろう。私たちだけじゃない。ルールを考える側に回れない国民をひたすらにバカにしてるんだろう。こんな国に誰がした?私達だよ。くそが
国会成立したらできるのは、地方自治体への働きかけ
教員は地方公務員ですが、実態は給与は都道府県から出ているものの、立ち位置はその市町村の職員です。ですから、勤務に関するこれからは市町村が条例改正を行うかどうかにかかっています。国がだめなら、地方自治体に対して働きかけをすべきです。例えば、「うちは変形労働時間制を導入しません」と明言してくれるようにするとか、(異動したらチャラになるのが怖いですが)
最終手段は退職&私立学校の設立
これですよ。もう、こんな環境で働けないなら、みんなが幸せになれる学校を作って転職しよう。(あ、これはフラグじゃないです)
まとめ
- 一年前は否定していた制度をしれっと閣議決定してきた
- 残業代なしは意地でも変えない
- 勤務の効率化の効果測定をする前にぶっ込んできた
- 勤務時間を把握する仕組みがないのにぶっ込んできた
- 子育て、介護、その他現状で定時退勤をしている先生たちが揃って懸念の声
- 国はもう駄目なら地方自治体に働きかけを
- それでも駄目なら学校設立を
- そもそも現状でも定時で終わらない仕事量がおかしい
現場からは以上です。
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