令和5年7月4日付け、5文科初第758号にて、「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン(リンク先PDF)」が発出されました。
それを受けて、多くのニュースや見解が出ているところですが、私も考えたことを少しだけ書き残しておこうと思います。
参考:
みんなのコードの見解:
ライフイズテック讃井さんの見解:
「使わないとして全否定するガイドライン」じゃなくて良かった
一つ前の記事で私が書いたこと
いろんなもののハードルがAIによって下がっていく昨今、本当にやりたいこと、突きつめたいことを見つけて取り組んで、あとのことは平均点のAIに任せれば良いみたいな考え方がどんどん出てくると思います。
仕組みを知って、体験して、何を残すか。それが私たちの考えることなのかな、と思いました。
というように、先ずは仕組みを知った上で体験し、どう活用するかを考えよう。それが教員のすべきことだ、みたいな書き方をしましたが、まさしく今回のガイドラインはその通りになっているなと思いました。
まずガイドラインでは、
生成AIの活用は学習指導要領に挙げられている「情報活用能力」(これ、かなりのウエイトが置かれている超重要な能力に位置づけられています)の育成のためにも、仕組みの理解やどのように学びに生かしていくかという視点、近い将来に使いこなす力を意識的に育てていく姿勢は重要である。(鈴谷によるガイドライン4ページ意訳)
と述べています。
要するに、使う立場に立った訳です。
これはかなり大きな進歩だと思います。
何かにつけて、新しい技術、特に発展途上で定まっていない技術に対して禁止するような方向性が出やすいのが日本ですが、それだと近隣諸国にあっという間に置いていかれます。日本として、情報活用能力の育成の一環として生成AIを使っていこうと名言したのは、英断です。
4ページの結論部分にはこのように書いてあります。
① 現時点では活⽤が有効な場⾯を検証しつつ、限定的な利⽤から始めることが適切である。⽣成AIを取り巻く懸念やリスクに⼗分な対策を講じることができる⼀部の学校において、個⼈情報保護やセキュリティ、著作権等に⼗分に留意しつつ、パイロット的な取組を進め、成果・課題を⼗分に検証し、今後の更なる議論に資することが必要である。
② その⼀⽅、学校外で使われる可能性を踏まえ、全ての学校で、情報の真偽を確かめること(いわゆるファクトチェック)の習慣付けも含め、情報活⽤能⼒を育む教育活動を⼀層充実させ、AI時代に必要な資質・能⼒の向上を図る必要がある。
③ 教員研修や校務での適切な活⽤に向けた取組を推進し、教師のAIリテラシー向上や働き⽅改⾰に繋げる必要がある。
私はこう読み解きました。
- 先進的な取り組みを潰さずに有効活用事例として出していこう。
- (生成AIだけじゃないけれども)真偽チェックができるような情報を適切に活用できる子どもたち(教員もそう)を育てよう。
- 働き方改革のためにも、AIの活用は検討されるべきだが、教師のAIリテラシーの向上が必要。
一方で、使い方には気をつける、ある程度の制限も。
5ページにはどんなことに使うのがふさわしく、どんなところにはふさわしくないのかの例示も挙げられています。
基本的にはAIに全部任せないで自分で考える部分を入れよう、教師の専門性が発揮される部分に代用しないようにしよう、という制約です。まぁこれは現時点では妥当じゃないかと思います。皆さんはこの適切・不適切なリストどう思われましたか?
改訂されるのが楽しみ
おそらく夏休みの宿題での活用について見解を出す必要性があるためにこの時期に間に合うように急いで策定したものだと思いますが、先ずは前向きなガイドラインとして発出されたのは本当に嬉しいことです。
ここからどんどん改訂を重ねて、生成AIが適切に用いられる授業がどんどん行われると、また授業の風景がガラッと変わってくると思います。
最後にもう一度、ガイドラインへのリンクを貼っておきます。
「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン(リンク先PDF)」
是非皆さんも言及していきましょう!