これもいじめなの?と思う程広くなったいじめの定義
この記事は、以下の記事の続きです。
この記事では、特定の子に対しての行為では無かったので、いじめと認定して良いか微妙なラインではありましたが、そもそも、現在いじめの定義がかなり広くなっております。
いじめの定義:文部科学省 によれば、
「いじめ」とは、
「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」
とする。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。
となっております。
では、このケースはいじめに該当するでしょうか。
いじめかどうか、分かりますか?
A君はいつも元気で、授業中にもよく手を挙げるし、悩んでいる友だちに対して、「どうしたの?」と優しく声をかけてあげられる、素直な子である。Bさんは、少しやんちゃな面があり、友だちに対して悪口を言ってしまうこともあったが、徐々にその頻度は減り、今では友だちとどのように仲よくしていくべきなのかを考えながら、行動できるようになってきた。A君とBさんは違う学校だが、同じ塾に通っている。
ある日、塾での授業中、BさんがA君に対して、A君の母親に関する悪口を言った。それに怒ったA君はとっさにBさんのことを叩いてしまった。塾の講師はすぐに2人に対して指導し、お互いに謝罪した。
Aさんの保護者は、そのようなことがあったと担任に相談をした。担任からも人を叩いてはならないという指導をし、A君はとても反省した。
後にも先にも、A君が人を叩くという事例はこれっきりだった。
問1:いじめに該当するケースがあるか
問2:あるとすると何件あるか
答え
問1:いじめに該当します
問2:2件該当します
解説
まず、前提条件から。
学校内外を問わないので、塾で起きたケースも該当します…。
次に、一定の人間関係がある、塾が同じなので、これも該当。
心理的、物理的な攻撃は、Bさんが悪口を言ったこと、A君が叩いたこと。
精神的な苦痛を感じているもの、は児童生徒の立場になって考えるので、両者とも苦痛を感じたと想像できるため該当。
以上です。
その後どうしたかは関係無い
わざと太字にしたのですが、些細な悪口でもそうですし、叩いたこともそうですが、一度きりでその後起きていないということは、いじめの認知と関係ありません。
なぜなら、18年度にいじめの定義が変わったことにより、「継続的」という文言が消えたからです。一回でもそのようなことがあったら即いじめ認知です。
都道府県によって開きがある
図表を毎日新聞の記事から引用してきますが、都道府県によっていじめの認知に開きがあるのは、この認識に都道府県ごとの違いがあることが想像できます。
この図表で、赤く色分けされている都道府県を「いじめが多い」と認識するのは間違いで、「いじめの認知を積極的にしている都道府県」と捉えるのが正解ですよ。
いじめを認知すると?
うちの市の場合はおそらく「年3回の市教委による生徒指導主任への聞き取り調査」と「いじめ対応シートの作成、継続的な更新」が入ってくると思います。そのシートを書くためにはケース会議を開き、対応を全教員で協議します。1つのいじめに対して会議に2時間、聞き取り調査は30分×3、シートの作成に1時間と更新の都度時間がかかります。それで上のケースを認知していたら、まず、教員が死ぬと思います。
ここで「思います」と使っているのは、上の例ではなく、結構真面目にいじめかも知れないというケースを管理職に確認しにいくと、「まぁ、経過観察でいいでしょう。」といじめ認知をしない方向で決まってしまうからでした!なのでうちの学校はいじめゼロです。形だけは。
本当にいじめだと思ったら認知を迷わないこと
でも、私もお飾りで生徒指導主任をやっている訳ではありません。いじめ認知はせずとも、こういう子が居ますよ、という報告会での報告にあげる人数を来年度は倍にします。今年生徒指導主任をやってきて、いやいや、この人数じゃないだろ。これは、と思ったためです。どんどんあげます。
校長にだって報告する、市教委にだって知ってもらいますよ。そうじゃないと、いざという時に私の元で止まってましたじゃ、ダメですから……もありますけど、やっぱり子どもたちのためです。
先手先手を打っておく。これが必勝法です。だから、いざという時に「あぁ、あの子か。」と私以外の人も気づける状態にしておくことは大切だと思います。日常の生徒指導も、そういう視点が入っていると、全校の教員が同じ歩調で指導できます。
でも、何よりも大切なのはいじめを許さないという空気だと思いますし、相互理解を深めることなのかな、と思います。お互いをよく知り、お互いのために行動できるようになってきたら、いじめは減っていくのかなと思います。