パパ教員の戯れ言日記

このブログの発信は個人としての発信です。こんな教員もいるのかと思っていただければ幸いです。

動画を倍速で見ても学習はできるのか

記事を書いた経緯

少し前に人気エントリーで見かけたこちらの記事。

topisyu.hatenablog.com

上記エントリーでは、映画を例えに出しながら、コンテンツをどの速度で視聴するかは受け取り手の自由だと述べられていました。

ちなみに、栗原氏が映画の視聴に関する論文を書いております。

www.jstage.jst.go.jp

結果が面白いです。

音声言語の耳からの理解を諦めることによって式1により変速再生方式は鑑賞時間の85.5%の削減を実現できる可能性があるという著しい結果を得た

どんな風に削減したのかは上の論文をぜひご覧ください。

さて。子どもたちの端末活用を見ていても、YouTubeの高速視聴がとても多いです。

YouTubeでは、できる限りセリフとセリフの間を詰める、カットする作業が行われている動画をたくさん見ることができます。それなのに、更に高速で見るので、「君たちは一体何を楽しんでいるのか?」と思ったんですよね。音楽を高速で流す子もいますし。

最近は公式で高速バージョンを出すところもあります。
このトラックなんか、本当にただ高速にしただけです。

チキチキバンバン (高速 Ver.)

チキチキバンバン (高速 Ver.)

  • QUEENDOM
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

さて。実態はいいとして、動画を倍速で見ることに対しての学習効果の差異はあるのでしょうか。

同じ方が書いた2本の論文を紹介いたします。

まず1つ目。

論文1 「映像コンテンツの高速提示による学習効果の分析」

www.jstage.jst.go.jp

「映像コンテンツの高速提示による学習効果の分析」は、長濱 澄 - 早稲田大学大学院人間科学研究科、森田 裕介 - 早稲田大学人間科学学術院の二人によって、2017年、日本教育工学会論文誌に発表された論文です。

サマリーを拾ってみますと、以下のようになっています。

本研究では,オンライン学習環境を想定した映像コンテンツの高速提示と学習効果の関連性を明らかにすることを目的とした.1倍速,1.5倍速,2倍速の提示速度の異なる映像コンテンツを3種類作成し,大学生75名に提示した.作成した映像コンテンツは高等学校における情報科の宣言的知識を扱ったものであった.学習の前後に実施した理解度テストの得点から,学習効果を検証した.また,3種類の提示速度に対する主観評価を,質問紙を用いて調査した.理解度テストの分析結果から,提示速度の相違は,学習効果に影響を与えないということが明らかになった.一方,質問紙調査の結果から,映像コンテンツを利用した学習に適した提示速度として,1.5倍速が最も支持されているのに対し,2倍速に対する主観評価は肯定的ではないことが明らかになった.これらのことから,ある条件によっては,一定時間に,これまでの1.5倍から2倍の学習ができる可能性が示唆された.

スライドを提示するタイプの動画を高速で提示したときには、2倍速で学習しても学習効果が変わらないという検証結果(ただし、負担感はある)でした。

論文2「映像コンテンツの高速提示が学習効果に与える影響」

www.jstage.jst.go.jp

「映像コンテンツの高速提示が学習効果に与える影響」は、長濱 澄 - 早稲田大学大学院人間科学研究科、菅野 弘朗 - 早稲田大学人間科学部、森田 裕介 - 早稲田大学人間科学学術院の三人によって、2018年、日本教育工学雑誌に発表された論文です。

この論文では、ものすごく簡単にまとめると「先に限界が来るのは聴覚の処理能力」ということでした。

結論

①動画を倍速再生しても、理解度に差は見られない

②聴覚の処理能力が間に合わなくなるので、耳の情報量が多い場合は視覚情報を少なくした教材を提示する(ただし、聴覚のみでは3倍速でも平気。 ▶ 正常者の伸縮ひずみ語音の聴取明瞭度日本聴覚医学会学術誌にて発表)による。

人って、当倍速以上の情報に対しても処理する能力が高いんですね。(まぁそうじゃなかったら走るスピード以上に速い車の運転できませんけど)

ただ、私が子どもたちに期待するのは、余白の時間の大切さにも気づいてほしいなぁってことです。
スマホも持たず、だらーっと温泉に浸かってる時間もいいよね、ってこと。

んで、このブログは空白の時間が多すぎたんですけどすみません。そろそろ再開します。

本書いてたので、本の原稿書かずにブログ書くのはおかしいよなと思ってたら、本がボツりました。笑

こっちで書く!今後ともよろしくお願いします!

はてなIDをお持ちの方は読者になるボタンをぜひ。