パパ教員の戯れ言日記

このブログの発信は個人としての発信です。こんな教員もいるのかと思っていただければ幸いです。

12時間全部を子どもに預ける、単元全部、学び合いチャレンジがスタート!

あ、今日はかなり教員の方にしか分からない内容かとは思います。

いよいよ単元全部を子どもたちに預ける段階に入った

1時間の中で、子どもたちに時間をあげて学び合い、課題解決を図るという実践をコツコツと重ねてきまして、多分大丈夫だろうと判断したので、単元全部を子どもたちに預ける算数をスタートさせました。

このプリントは去年4年生を担任していた時に使った物ですが、今年も同じような形です。

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時間、目標(何が出来るようになっていて欲しいか)、課題(そのために何をクリアしなくてはならないか)、自己評価となっております。非常にシンプル。

昨年度の実践の流れを書いておこうと思います。

1時間目…考え方の説明

目標を語る

「1時間ずつ区切っての学び合いはもう積み重ねてきたよね。だから、もっと大きなチャレンジをします。(この時は)14時間全部を君たちに預けます。私が君たちに求めるのは、この14時間全部を使って、クラスのみんながこの単元でよい結果を取ること。そのために必要なことはみんなで考えて実行していいです。席を動かそうが、立ち話をしようが、お任せします。もう一度言いますが、この14時間が終わった後、クラスのみんなが内容を理解していればOK。」

進め方

「14時間の学習なので、14時間分の課題は今渡したプリントに載せました。先生が授業するとしたら、こんな感じ。でも、君たちは1時間で2コマ分進んだって構わない。あ、ここは難しいなぁ、と思ったら、分かるまでチャレンジしていいので、1コマ分進まないときだってあると思う。14時間のうちにうまく終わっていればいいので、自分のペースをつかんでいこう。」

クラスで成長する

「クラスの目標として、クラスのみんなが理解することを目指すから、本当に終わったと言えるのは、クラスの全員が自信を持って理解したと言えたとき。自分の課題が終わったとしても、それは自分だけの話になるから、クラス全体のことを考えていこう。」

可視化

「自信を持ってその時間の課題をクリアした、教えられる!と思ったときはこの名簿に金色のシールを。とりあえずクリアできた、という時は普通のシールを。助けて欲しいときはシールを貼らず、逆にシールが貼ってある子に助けを求めていこう。」

「それでは、スタート!!」

予習してくる子が5人くらいに

単元の流れが見えているので、予習してまでガンガン終わらせようとする子が5人くらい出ます。そういった子たちは3時間目くらいで14時間分の課題を終わらせて、他の子たちを引き上げる方にまわっていきます。(男子なんかは、俺の課題は終わったから談笑だー!となるけれども、それも2時間くらいすると、しょうがねぇなーなんて言いながら教えている姿を見るようになります。怒らず我慢出来るかが鍵。)

交流できなかった子たちのところに子どもたちがどんどん向かうようになる

「教えて!」って言うのって、結構ハードルが高いんですよね。出来ないことを認めないといけない。そして、それを、この人なら教えてくれそうって人に頼む必要がある。内気な子ならなおさらです。

でも、そこを乗り越えて欲しい。もう少し大人になったら、分からないことを近くの人に聞くのは出来ないといけないスキル。なので、ここで試行錯誤させます。

とは言え、授業が進んでいくと自分たちの課題を終えている子たちが、困ってる人いませんかー、と巡回するので、ハードルは下がります。

教員には不可能な、1対1での45分間指導が、複数箇所で実現し始めます。

教員の役割が、マネジメントに移行していく

教える主体という役から、学び合う集団をマネジメントする役に変わります。これが、結構な覚悟が必要です。どうしても、教員は教えなきゃ、という考えを持っています。困っている子に対して、どうにか教えないと、と考えます。いや、それが今までの役割なので当然そう思って良いですし、そうしないとならない場面は多々あるのですが、ギリギリまでは我慢して、子どもたち同士の学びの向上に努められると、集団としてグッと伸びます。

残り時間を気にするようになる、学びが止まらなくなる

あと何分あるのか、あと何時間使えるのかを考え始め、逆算してそろそろマズいとか、大丈夫だとか考えられるようになってきます。

という訳で、最後の方はほとんど終わってくるので、ちょっと言えば、テスト問題を作り合って、問題を出し合ったりする子たちも出てきます。塾で教わった解き方を披露する子も出ますし、同じ塾に通う子同士で、「あー、この問題あった。アレ難しいよねー。」と言う会話をすると、近くの子が「どういうこと?」って聞きますので、そこで講義がスタートします。ホワイトボードに書きながら、塾の解法を説明する様子なんかも見られるようになってきます。

さて、肝心の結果は(比較対象について)

わり算の筆算(1)とわり算の筆算(2)で比較します。

(1)は一桁で割る、(2)は二桁で割る、という点で違いがありまして、もう少し言うならば、(1)は実習生が入っている時に実習生が何時間か担当しているというハンデはありますが、実習生の指導内容に落ちはありません。そこは大丈夫。

まず始めに、従来の指導法でやったわり算の筆算(1)。

A評価(90%以上)…13人

B評価(70%以上)… 8人

C評価(70%未満)…12人

が結果でした。あまりにもマズいと思って再テストしましたが、惨敗です。
特に、C評価の子の多さが厳しいレベル。

50%以下が5人いました。

この単元のつまずきポイントは

わり算の筆算って、「立てる」→「かける」→「引く」→「下ろす」の順番で進めますわり算の筆算だけれども、かけ算と引き算がここで活躍するんですよね。そして、「かける」の時に商の見積もりが出来ないと、毎回間違った商を立てて、イライラするようになってきます。今までの指導内容が着実に入っていないと、惨敗するんです。

教員の限界

この時のクラス、かけ算九九が危うい子が何人かいましたし、繰り下がりのある引き算に課題を抱える子もいました。そういった子は軒並み低得点です。しかし、5人となってしまうと、教員1人では救えません。仮に他の子たちを全部放って指導しても、一人9分しか使えません。

一人9分で、かけ算九九や引き算を交えながら、わり算の筆算について教えるのは、すみませんが無理です。まずもって他の子たちへの指導役もいません。

TTで、二人体制になったとしても、一人は授業を進める側になります。その中でもう一人は5人に対して指導できますが、9分という時間では無理でしょう。

少人数指導でクラスを半分に分けたらどうでしょうか。

使える時間は2.5人だとして、45÷2.5=18 なので、一人18分ですが、授業は進みませんので、実質使えるのは、一人10分ほど。(20分で授業を流して25分習熟だと考えるとそうなる。)1分増えましたけど、無理でしょう。

そして25分間、おとなしく他の子たちはしているだろうか。というか、そのおかげで他の子たちがおとなしくしていないといけないのもどうなのよ。

学び合いの結果は…?

では、わる数が二桁になった、わり算の筆算(2)の結果はどうでしょうか。

A評価(90%以上)…16人(3人増加)

B評価(70%以上)…11人(3人増加)

C評価(70%未満)… 6人(6人減少)

50点以下は4人でした。

まずまず、といったところでしょうか。子どもたち同士の学び合いで、ここまで引き上げることは可能ということです。

ただし、やっぱり50点以下になってしまう子は、かけ算九九や引き算の課題を克服しないと上がれないということが如実に結果として出てしまっています。そして、子どもたち同士の学び合いでは、そこまで考えが至っていなかったから、どうにか筆算を教えようとしてしまったというところを、私が見抜けていなかった。ステップを下げて、かけ算九九や引き算をやってから挑ませないとダメだったのを放置して、無策なまま時間を過ごさせてしまいました。これは、私の教材研究の失敗、子ども理解の失敗であり、子どもたちに責任はありません。私の導き方の失敗です。

でも逆に言えば、そういう本来必要なニーズに応じて柔軟に策を練ることができるのは、このスタイルだからこそ、ではあります。

今年はツッコミを入れることにした

子どもたちの学びを主体にしつつも、間違った方向に進みそうな時は先んじてツッコミを入れることにしました。「んー、それでいいのかなー?○○さん、どう思う?」と繋ぐ。「あれ、その図は、○○さんと同じようで違うよ。どっちが正しいの?相談してみて。」と繋ぐ。

とにかく、繋ぐ。学びを引き起こすようなツッコミを入れるようにして回るようにしました。

学習意欲が無い子が日記に書いたこと

いつも、「どうせ勉強なんか必要無いんだ!」と声高に言って、学習に向かおうとしない子がいました。でも、このスタイルでやって1回目。彼は日記にこう書いています。

「今日の算数、できなくてくやしい。できるようになりたい。」

その子の算数の時間は、いつもと同じように「どうせできないんだから、やらない~」と言っていたのが20分間。その後、「まあ、ちょっとならやってみよっかなー」が20分間。「あ~!ちくしょう、今日の課題は終わらない。もうここでいいや、終わり~!!!!!」が最後の5分間でした。多分、最後は出来なくて悔しがっていたんだと思います。

このように、教員がマネジメント側になると、子どもたちの思考の流れを、ちゃんと個人個人を対象に読み取れます。

おとなしく授業を受けているあの子が、実はどんなことを考えながら課題に向かっているのか、遠目からじっくり観察することができます。

良いことずくめのように見えますけれども、その骨組みをじっくり作ってきて半年経ったからこそ、出来ることです。いきなりこれをスタートすると、学び合いません。クラスのことを考えて、教えたり、相談したりすることが良いことなんだ、クラス全体が成長していくって、ステキなことだ、という共通理解が根付いていること。そうやって、みんなが得する方向に動けるような子たちだと判断したからこそ、12時間を預けることが出来ます。

さて。この単元が終わるのは10月末の予定です。どんなドラマが起き、どんな結果になるのか、またお伝えしたいと思います。

学び合いを学ぶには、まずこの本からです。一緒にがんばりましょう~! 

クラスが元気になる! 『学び合い』スタートブック

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